こころの筋トレ

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「失敗の本質」から学ぶべきこと

 

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

 

 

読んだ。

非常におもしろい。今年一番おもしろかった。

 

 

太平洋戦争で歴史的な大敗を喫した日本。
その敗北の原因を組織的、社会的に分析し、なぜあのような敗戦を招いたのかを研究した本。

 

本書は太平洋戦争の敗北においてキーポイントとなった複数の戦い(ノモンハン事件ガダルカナル作戦、沖縄戦等)を例に挙げ、それぞれの敗北の理由を分析する1章、それぞれの敗北に見られる共通点を取り上げ、失敗の本質を分析した2章、これらから得られる学びをまとめた3章で構成されている。

 

敗北の要因は複数挙げられているが、特に

  • 過去の成功例(=日露戦争等)にとらわれて組織が最適化され、環境の変化に適応できなかったこと
  • (その結果として)戦略が現実離れし、戦略の不備を現場の戦術、ひいては精神論に求めたこと 

などは興味深い視点である。

 

漫画や小説などの作品では、現場で英雄的な活躍をするヒーロー(ガンダムで言うところのアムロ・レイ)に焦点を当てられることが多い。
しかし本来、現場の活躍=戦術をもって、その上位概念である戦略(ひいては兵站)の不備をカバーするといった組織運用自体に歪みがあり、そこに過度な期待を持つことは好ましいことではない。
(無論、彼らの功績は当然讃えられるものであるが)

 

ひいてはそこを精神論でカバーするような体質がまかり通ることが問題であろう。

 

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本の最後では、これらの日本軍の体質と現代社会(特に産業界)の対比が行われている。
著者いわく、本書出版の頃の日本(=1984年)はまさに戦前の日本軍の体質と共通項が多く、環境の急激な変化に対応しきれない土壌が培われているとのこと。
著者の予言通り、現代日本が産業面で新興国の急激な成長に脅かされているのは興味深い。


何らかの形で組織を運用し、人の上に立つ立場の人たちには非常に学びの多い一冊である。

 

ただしこのような分析的な視点とは別に、やはり現場レベルでの太平洋戦争の悲惨さを学ぶこともまた非常に重要なことと思う。

最後の言葉 戦場に遺された二十四万字の届かなかった手紙 (講談社文庫)

最後の言葉 戦場に遺された二十四万字の届かなかった手紙 (講談社文庫)

 

 

ガダルカナルや沖縄での地獄絵図はよく知られた通りで、その凄惨さを学ぶこともまた、後世に伝える上で大切なことだろう。