こころの筋トレ

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クラウド・コレクター(クラフト・エヴィング商會)を夢眠ねむが人生の1冊に挙げた理由を考えた

 

新版 クラウド・コレクター (ちくま文庫)

新版 クラウド・コレクター (ちくま文庫)

 

 

これは喰らった。今年一番喰らった。

本当に面白かった。

クラフト・エヴィング商会の先代である祖父が愛用していた古い皮トランク。その底から古ぼけた手帖がでてきた。そこには、不思議な国アゾットに関する、驚くべき旅行記が記されていた。読み進むうちに、孫にあたる三代目は、奇妙な物の数々に出会うことになる。得体の知れない機械、判読不能の書物やポスター、奇妙な譜面や小箱、そして酒の空壜らしきもの。壮大なスケールの冒険ファンタジー。

Amazon紹介ページより 

 

でんぱ組.inc夢眠ねむが会報誌で紹介していたことが出会い

わたしの愛するアイドルグループ、でんぱ組.inc夢眠ねむさんが、会報誌の質問コーナーで「人生の1冊」として挙げていたのが本書との出会いでした。

 

夢眠ねむさんは多摩美大卒、元デザイナー志望という経歴を持ち、

なおかつサブカルチャーに関する深い造詣をお持ちの方です。

自身の経歴と独自のセンスを活かして様々な媒体でマルチに活躍しており、アイドルという枠を超えてわたしの敬愛する方の1人です。

 

本全体が作品

詳細を述べることは極力避けたいですが、本書はカバー、目次、本文、挿絵などすべてを含めて、本全体が一つの作品となっております。

作者であるクラフト・エヴィング商會自体の存在からして強烈なパンチを喰らった思い。序盤から最後の伏線回収まで、すべてにおいて「やられた!」という思いです。

 

 

ファンタジーはファンタジーとしてそのまま受け取ればいい

序盤において、本書の持っているファンタジーとしての性質のうち、かなり核心的な部分があっさり暴露されます。

推理小説で言えば犯人がわかるレベル)

しかしこの核心の暴露は本書の面白さを全く毀損するものではなく、むしろ作品としての内面をより深く描き出すためのきっかけとなっております。

 

何よりファンタジーをファンタジーとして、そのまま受け止めながら読み進めることを楽しむ、という新しい体験を得ました。

 

 

夢眠ねむさんの話に戻りますが、夢眠さんはMARQUEE Blogの自身の連載「まろやかな狂気」において、以下のように語っております。

www.marquee-mag.com

やっぱり後付けの話しか出来ないし、やっぱり生まれたときから"夢眠ねむ"でいる印象を付けたい。私は例えば、なんでそんな年齢とか本名とか知りたいんだろう?っていう側なんですよ。そのファンタジーをファンタジーとして受け取る人達と夢を見たいみたいなところのハードルとして"夢眠ねむ"っていう名前があって。そこで本名が気になっちゃう人は他所の人だと思うから。たぶん身体に馴染んでたりとか、その歯切れの良さを自分で体感してる子とセンスが近いんだろうなって思うから、名前を訊いて、とっつかない人達とは合わないかな(笑)

 

なんと彼女自身のセルフプロデュースにおいても、ファンタジーをファンタジーとしてそのまま受け取ってほしいというアイデアがありました。

 

でんぱ組.incというユニットはメンバー全員が年齢非公開です。夢眠ねむさんも当然本名での活動ではありませんし、本名も公開しておりません。

 

アイドルという職業は皆に夢を与える仕事だから、一種のファンタジーのような存在だから、年齢や本名にとらわれずに「夢眠ねむ」という一つのアイコンとして受け取ってほしい。わたしもそうやってプロデュースするからーーー

そんな彼女のメッセージが垣間見えるインタビューです。

 

やはりこの考え方の根っこには、人生の1冊として挙げたクラウド・コレクターがあるのでしょうか。

 

 

 

とにかく面白かった。2016年に読んだ中で一番おすすめです。

 

新版 クラウド・コレクター (ちくま文庫)

新版 クラウド・コレクター (ちくま文庫)

 

 

 

 ※2016/11/27追記

そんな夢眠ねむさんの著作「まろやかな狂気」が発売されました。

彼女の感性に触れられる貴重な1冊です。わたしの手元にあるのですがまだ読めてません… 

まろやかな狂気―夢眠ねむ作品集

まろやかな狂気―夢眠ねむ作品集

 

 すでに入手困難になりつつあるのでお早めに。